芝浦工業大学非常勤講師、後藤政志。格納容器の設計者として、格納容器のもつ一般的なリスクを踏まえた上で福島事故を捉えて説明しました。語り口は決して饒舌ではありませんが、誠実かつ細やかな説明で、私たちと原発技術の架け橋的存在です。
※後藤政志氏の発言は、以下のリンクから、文字おこしと画像で読めます。
後藤政志(原子炉格納容器設計者)の原発批判。シビアアクシデントは原子炉の特性(文字おこし)
後藤政志氏は、元東芝の原子炉格納容器設計者だ。今回の震災のおり、その直後からUstream中継で、連日数度にわたり、リアルタイムに事故の様子を説明し続けてきた。氏の言葉は専門的な言葉が多く、またその喋り方は決してなめらかではない。しかし、氏の技術的な視点は、私たちの理解を別の視点から深めてくれる。原発のデザイン設計の段階から、事故の対処まで、技術的に容認できない欠陥があることを鋭く指摘している。文字に起こしたものは、ひょっとしたら読みにくいかもしれない。だが動画と補完して読めば、必ずあなたの理解を深めるだろう。
(動画16:50から、文字おこし、はじめ)
「え、後藤でございます。よろしくお願い致します。わたくしあの、10数年間にわたって1989年からなんですが、10数年にわたって東芝で原子力プラント、特に原子炉格納容器の設計に携わってまいりました。で原子炉格納容器と申しますのは放射性物質を外に出さない。事故の時に閉じ込めると、いう容器でございます。その設計を担当してました。その立場からですね、原子力事故、今回の事故、および原子力事故というのはどのようなものであるかということを若干おはなしをさせていただきます。」
「原子力安全のシステム、がまあ考えますとですね、福島第一原発に限らないんですけれども。よく言われますように原子炉を止める、止めるってのは核反応を止めるっていう意味です。で、制御棒って言うのがありまして、それが燃料棒の間に入りますと核反応が止まります。」
「でしかしですね、今回止まったわけです。福島の第一、1号から3号全部ですね。ですけどこれはですね、実は止まったというのは運がいいという面があるんです。既に何回も制御棒の事故を起こしてる。地震で制御棒が必ず入るとは断言できなかった。今回は良かったということなんです。
「でそれは福島第一原発の3号だとか志賀1号で臨界事故というのを起こしてます。」ちょっと先に回しますと、次のページにリストがあるんですけど、10数件にわたって制御棒が脱落あるいはご挿入、つまり制御棒がコントロールを失った事故があって、しかもは、それは20年以上にわたって隠されてた。そのうち2件は臨界に達してる。臨界というのは予期せずに核反応が進むわけです。原子炉の中で。」
「こりゃとんでもない話なんですね。私は原子力の仕事に携わったときにですね、制御棒だけは絶対事故を起こさない、って言うふうに確信、確信って言うより周りからそう言われてましたし、設計者もそう言ってましたから、これだけはないだろうと思ってたんですね。ところが2000年代になってきたらこれだけわかってきたわけです。」
「この段階で私は、格納容器の問題もありましたけど、制御棒で、これだけの事故を起こすってことは、こりゃ原子力成立しない、技術的に。という風に思いました。」
「さて次ですが、今回は制御棒はうまく入ったわけです。で、冷やす、閉じ込める、ということになりますが。冷やすという意味は、原子炉を止めましても、その後、崩壊熱と申しまして、ずーっと長期にわたって、1年オーダーにあたって、冷やし続けないと燃料が溶けてしまいます。で今回は冷やそうとしたんですけど、地震で電源がこう、無くなって、津波あるいはその他の原因もあると思いますけれども、機器類、ポンプ類が動かなくなった。それで、特に水没したものもございますけれども、それによって多重、つまりいっぱいつけてある機械類が全部ポンプ類が動かなくなって冷却ができなくなった。こういう事になります。」
「それで炉心、つまり燃料がだんだん水面に出てきて溶けてくるわけですね。中からすごく熱が出てますんで。その熱で水蒸気と反応して、その被覆管って言うんですけど、管があって。そこから水素が出て、ま、今回、爆発等も起こりました。」
「でこの事故の経緯で、最近メルトダウンとか言う話、初めて出しましたけど、これはもう、11日か12日の段階ですね、3月の12日の段階で、炉心の損傷、炉心の冷却ができなくなっていて、格納容器の圧力も相当に上がって、この段階でほぼ、こういう道に行くのは間違いないという形だったわけですね。」
「でまあ、炉心、つまり圧力容器も壊れ、非常に不安定な状態でそれでもずーっとなんとか作業を通じて冷却を維持してきた。今でもですね、不安定なんです。原子力プラントの中のシステムで冷やしてるんじゃない。外から付け足して、一部回復したところもございますけれども、基本的には装置が駄目になったので、外から人海戦術でなんとか維持してきてここにきてると。そう言う不安定な状態だということです。しかも閉じ込め機能も失ってる。になります。」
「でこれをですね、設計の方から申しますと、こういうふうに大きく見ましてですね。設計の想定の範囲と、それから制御不能な範囲というふうに考えますと、通常状態とか過渡状態とか事故って書いてますけど、要はある事故ですね、冷却材喪失事故ってのはまあ水が出ちゃうとかですね。それから電源がなくなるとか、そういう事も原子力プラントは当然考えてるんです。」
「そこでこういうふうに設計してるんですが、今回のように更に止める、冷やす、閉じ込める、という機能をですね、ある地震、津波、その他の、多分これは危機の故障、それから人為的なミスも絡むと思います。それでここに書いてあるシビアアクシデントという、いわゆる制御不能の状態になる。これが今回の事故なんですね。」
「こうなりますと水素爆発とか、水蒸気爆発とか、再臨海とか非常に危機的な問題を生みます。」
「で、図で、えーご説明申し上げますと、炉心が溶けて落ちますと、そこがそれが圧力容器、厚さ10数センチの厚い容器の中に落ちます。ここで冷却ができなければ、そのまま溶けて下に落ちます。更にここで冷却できないと、そのままコンクリートを侵食してどこまでも行く。これをまあブラックジョークですけれども、チャイナ・シンドロームって言ってるわけなんですね。」
「でこの段階で冷却をするために水を入れます。水を入れますと溶融物、非常に高温の溶融物に水が接触すると、水蒸気爆発の危険性が極めて高いんです。」
「これは火山。火山においてマグマが水と接触した沖に爆発です。こういう現象を起こします。」
「さらに冷却に、をしていきますとですね、その段階で、ま、冷却にうまくいけばいいんですけれども、ここにありますように、流れてきますと、格納容器の後半、鉄板ですね、だいたい厚さ2、30ミリなんですが、それを溶かしてしまいます。そういう壊れ方もあると。」
「でこれは事故ですから、どのプロセスに行くかは、その経過とですね、よってかわります、当然。ですが、どれを行ってもおかしくはなかった。今回はここの少なくとも、水蒸気爆発ですね、これは起こってない。」
「水素爆発は起こりました。何かといいますと、中の水素が格納容器のあるところから出まして上で爆発した。これがもし格納容器の中で爆発現象を起こしてて、そのまま格納容器が破壊してたときには、今のケタ違いの被害になります。」
「今回の格納容器は、まだ一部損傷してますけど爆発的に全部出たんじゃないんですね。爆発は建物、つまり格納容器の上、で爆発して一部出ちゃった放射能が飛んだだけなんです。そういう関係になります。」
「で原子力技術の特徴について、申し上げます。」
「ま私の、えー、理解では、非常に技術が細分化している。これはあの、全般の原子力にかかわんない、あの限らない面もあるんですけれども。特に原子力においては全体像が把握しにくい。技術者はなかなか周囲の仕事を知らない、形になってしまう。」
「そうしますとですね、設計の段階での管理、これはあの、設計をどういうふうに変更するかとか、設計したものがこれでいいのかっていう、デザインレビューとか言うんですけど、いろんな分野の人間が審査したりする。」
「そういう事をやってきてるんですけど、どうしても技術というのは、非常に危機感を持って、例えば、事故が起こるとか安全はどうだということを考えながらデザインレビューしてれば意味がありますけれども。こんな事故が起こるはずがないと思ったデザインレビューというものは形骸化します。形式的にやるだけなんです。」
「私の経験してるとこでも、当初、最初の頃はかなりデザインレビューがしっかりしてた。それから5年、10年たつに従って非常に形骸化して言った。そういうふうに思います。これは安全審査についても言えます。そういう形でどうも見ていますと、技術のわかる専門技術者が本当にいるのかと審査に。という印象を受けます。」
「それから、更にですね、事故が、まあ多発してるということです。これはですね、軽水炉、つまり今回の福島の事故に限らない、軽水炉と申しますのは、沸騰水型と加圧水型の2種類ございますけども、今日本で使われている通常の発電所の原子炉で、今回の事故だけではなくて、いろんなところで事故が多発している。細かいことは省略しますけれども、同じく高速増殖炉もんじゅも実用がしてない。どころかトラブルの連続。」
「一部、燃料棒をこう、交換するためにですね、燃料交換するために入れた装置が、ちょっと引っかかちゃった。それでおっこっちゃったんですね。ちょっと傷ついたわけです。でそれを持ち上げようと思ったら、引っかかって上がらない。普通、機械ではよくあることです、そんなものは。1週間もあればなおります。ですけどそれはナトリウムがあるから見えない。出そうと思うと、燃料出せばいいんですけれども、燃料はナトリウムの中にないと危ないんで。そうすっと、それを出すための装置が壊れてる。なにも出来ないっていう状態が、半年、1年続くんです。こんなの技術じゃないんです。設計の立場からいうと、何を考えてるのか。そんなことを、1つのものが壊れてですね、何も出来ないのは技術じゃありません。設計の立場からそういうふうに言えます。ということなんですね。」
「それからも1つはやはり安全設計と被曝労働。これは問題がある。被曝を前提とした安全設計というのは私は非人間的だと思います。5分で行ってきて入ってこうやるわけですね。その時に仮にそれがね、そういうやり方がいいとしても、難しいのはですね、コントール出来ないんですよ。確実にね、被曝をぜ、あの、ある???なんてそんなこと私は信じられません。人間ってのはどうしてもミスもありますし。そういう事を考えますとこれは、とても私は人間的な労働だと思いません。」
「それから処分ができない大量の放射性物質。これも良くトイレなきマンションと言われてます。」
「さて、現在の事故をどう見るかといいますと、炉心が冷却、炉心の冷却を続けてます。たしかに現在全体の温度はですね100何度とか100数10度オーダーまで降りてき、落ちてきています。ですけどまだ依然として、もし冷やすことをやめればそのまま進むわけですね。そういう関係になってる。」
「しかもですね、溶けた溶融物が、メルトダウンしたっていいましたね、そうしますと圧力容器の中にあんのか格納容器の中にあるかすらはっきりしない。全く中はわかってないんです。ただし水を入れたらなんか冷えてるらしい。」
「つまり技術的に見ますと、ちゃんとした、わかってコントロール出来てるわけじゃないんです。そうであろうといって推測でやってる。これは最初のメルトダウンといったのがよくわかりますよね。最初に全く、炉心一部燃料損傷って言ってたのがメルトダウンだった。これだけ違うわけですから、今の状態に対してどれだけ責任を終えるんですか。中を見れるんですが。圧力温度は正しいんですか。どれ1つ、私は疑って見ざるをえないという状態にあるんですね。もちろん今の状態が以前よりはだいぶ、少し楽になってきてんのは明らかです。ですけど事故というのは、そういうところから思わぬところから発展して大きな事故になるわけです。そうしますとこれからも安定させてやることが以下に難しいかということを、まあ言ってるわけです。」
「あと、同時にですね、1号機、2号機、3号機とも、格納容器が損傷してます。格納容器が損傷してることは、そのまま放射能が外にでてるってことです。で、外に出てます、既にたまった10万トンに近い放射性物質を帯びた水がですね、海や地下水に漏れ続けてるんです。これは今大量に滅茶苦茶に漏れてるとは申しません。もちろんそのコンクリがありますからね。ですけど容器じゃないんです。格納容器のように閉じ込め機能を持ってないんです。ですからコンクリートが割れたらそこから行きますし、すじ?のところから行く。流れてくわけです。そうすっと、現在は大なり小なり放射性物質を垂れ流している状態が続いていると。そういう認識です。」
「それはなんとか既存の陸上タンクなりメガフロートや???でもいいです。格納機能を持ったところに入れる、ほうが先決だと思います。その上で処理をする。思います。」
「で、原子力の技術について考えますと、どれも究極な選択になってる。先ほど申しましたように、冷却しようとする。冷却に失敗すると、失敗するといいますか、水を入れると水蒸気をおこす。あるいは格納容器がそうなんですが、今回、圧力が上がりすぎたんでベントすると。どういう事かって申しますと、格納容器は放射能を閉じ込めるための容器ですから、それをベントするという意味は、放射能を撒き散らすということを意味してる。つまりですね、このままほおっておくと、格納容器が爆発しちゃう。最悪だと。」
「だけど漏らすってことは逆に放射能を出すんですよ、そのまま。人に向けて放射能を出してるんですよ、これは。なんでその認識がないかってことなんだ。その時に格納容器のベントするということの意味をどれだけみんなが分かっていたかってことになる。そこは非常に重たい問題なんです。」
「特にこの問題は、説明がですね、非常に私は間違っていると思います。きちんとした説明してないと思います。また安全をどう見るかですが、まあ、状況が把握できない、ということは非常に問題だということ。」
「もう1つはですね、安全性の哲学といいますかですね、安全の考え方が不在だというように思います。確実でないことを安全とは言えませんので、多分大丈夫だとか危険な徴候がないからいいだろ、こういうグレーゾーン問題と呼んでるのですが、こういう問題が論理的に起こりうることは、いつ、かつ、起こるかわからないわけですから、そうすると、そう言う理屈の上でですね、ある形で起こりうる事故というのは論理的に起こりうるんですね。これはその上に安全技術を築くのは砂上の楼閣だと、いう風に思います。ええ、これグレーゾーン問題ともうしますけれども、これはちょっと省略させていただきます。」
「で、福島の原発事故はですね、直接的には地震と津波でした。ですけど、これに危機のトラブルだとかあるいは人為的なミスが重なってるだろうと思います。でそういうことから、最終的には事故解析やるわけですけど。基本的には自然条件の設定が間違っていたこと。で津波が例えば何メートル、間違ったとして、仮に対策をこれからするとしてもどれだけまでやればいいかってことは非常に問題です。地震も同じです。また、例えば津波や地震、一部対策をしてもですね、それで、こういうシビアアクシデントが起こらないかっていうと、そんなことはないんです。」
「落雷でも台風でも竜巻でも、ある多重に何処かをやられてしまえば、あるいはそんな外的条件なしで、危機が故障して、それに人為的なミスが重なると、シビアアクシデントになります。つまりシビアアクシデントはですね、発生確率が小さいとして無視してきたんです、これまで。これが最大の問題です。これは原子力安全委員会の責任が重大というふうに私は思ってます。」
「またシビアアクシデントは原子炉の特性であって、不可避であると。つまり地震津波はその入口であると理解しております。」
「でこれはあの規制のことで細かくは省略していただきますが、1992年に既に原子力案是認委員会で対策を取ることは言ってた。ただ、しかしそれは、法的な規制をしない、民間の自主的な規制によると、こういう話でした。」
「で、えー、図の上でちょっと概念を申し上げますと、横に時間、縦に出力と申しますか通常のものは他のエネルギーシステムの場合には横にだんだん寝てきますけれども、原子力は赤のように立ち上がってくるわけです。それを途中で安全装置を働かせて、抑えこむんです。その安全装置は何重にもなってます、たしかに。4重にも5重にも。でもそれが全部突破されると自然とですね、原子力は……だ、ダメな方向に行ってしまうんですね、制御不能な状態になる。これが特性なんですね。これが原子力の特徴だと思います。」
「それを事故防止ができるかどうかって言うことで、事故の発生防止とか事故の影響緩和とかを考えまして、どういう対策をしても、事故、ある確率ですね、確率は小さいけども、そういう事故が起きてしまうっていう場合には、それは受任できない技術だと。」
「つまり技術をですね、ある技術だったら全部使っていいわけじゃなくて、その技術はほんとに大事故を防げんのか。防げないとしたら、起きたときの影響とはどの程度か。それが受任できない技術はやめるべきだとそういう意味です。」
「従いまして我々の、我々はですね、最悪の事故の可能性を考慮する必要がある。今度原子力の事故を起こせば、日本は壊滅すると私は思います。原子力をこれ以上進めるというのであればですね、絶対にシビアアクシデントを起こさない事を証明する必要があります。工学的には、そのようなことは私は不可能だと考えています。つまり危険な原発からは、段階的に止めるなり、するなりしかない。そうしますと完璧な事故対策を模索するというよりも、新たな分野でのエネルギーシフト、が、ほうが遥かに容易であろうと考えます。」
「まあ膨大な原子力予算をですね、他の技術へ向ければ解決可能ではないか。あらゆる原子力関連の利権、そういうものを許してはいけない。そういうものからもう一度全体を見なおして、エネルギー政策全体、を見なおして、原子力から脱却してくことが、現実的だと思います。以上です。ありがとうございました。」
(文字おこし、ここまで)
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「え、後藤でございます。よろしくお願い致します。わたくしあの、10数年間にわたって1989年からなんですが、10数年にわたって東芝で原子力プラント、特に原子炉格納容器の設計に携わってまいりました。で原子炉格納容器と申しますのは放射性物質を外に出さない。事故の時に閉じ込めると、いう容器でございます。その設計を担当してました。その立場からですね、原子力事故、今回の事故、および原子力事故というのはどのようなものであるかということを若干おはなしをさせていただきます。」
「原子力安全のシステム、がまあ考えますとですね、福島第一原発に限らないんですけれども。よく言われますように原子炉を止める、止めるってのは核反応を止めるっていう意味です。で、制御棒って言うのがありまして、それが燃料棒の間に入りますと核反応が止まります。」
「でしかしですね、今回止まったわけです。福島の第一、1号から3号全部ですね。ですけどこれはですね、実は止まったというのは運がいいという面があるんです。既に何回も制御棒の事故を起こしてる。地震で制御棒が必ず入るとは断言できなかった。今回は良かったということなんです。
「でそれは福島第一原発の3号だとか志賀1号で臨界事故というのを起こしてます。」ちょっと先に回しますと、次のページにリストがあるんですけど、10数件にわたって制御棒が脱落あるいはご挿入、つまり制御棒がコントロールを失った事故があって、しかもは、それは20年以上にわたって隠されてた。そのうち2件は臨界に達してる。臨界というのは予期せずに核反応が進むわけです。原子炉の中で。」
「こりゃとんでもない話なんですね。私は原子力の仕事に携わったときにですね、制御棒だけは絶対事故を起こさない、って言うふうに確信、確信って言うより周りからそう言われてましたし、設計者もそう言ってましたから、これだけはないだろうと思ってたんですね。ところが2000年代になってきたらこれだけわかってきたわけです。」
「この段階で私は、格納容器の問題もありましたけど、制御棒で、これだけの事故を起こすってことは、こりゃ原子力成立しない、技術的に。という風に思いました。」
「さて次ですが、今回は制御棒はうまく入ったわけです。で、冷やす、閉じ込める、ということになりますが。冷やすという意味は、原子炉を止めましても、その後、崩壊熱と申しまして、ずーっと長期にわたって、1年オーダーにあたって、冷やし続けないと燃料が溶けてしまいます。で今回は冷やそうとしたんですけど、地震で電源がこう、無くなって、津波あるいはその他の原因もあると思いますけれども、機器類、ポンプ類が動かなくなった。それで、特に水没したものもございますけれども、それによって多重、つまりいっぱいつけてある機械類が全部ポンプ類が動かなくなって冷却ができなくなった。こういう事になります。」
「それで炉心、つまり燃料がだんだん水面に出てきて溶けてくるわけですね。中からすごく熱が出てますんで。その熱で水蒸気と反応して、その被覆管って言うんですけど、管があって。そこから水素が出て、ま、今回、爆発等も起こりました。」
「でこの事故の経緯で、最近メルトダウンとか言う話、初めて出しましたけど、これはもう、11日か12日の段階ですね、3月の12日の段階で、炉心の損傷、炉心の冷却ができなくなっていて、格納容器の圧力も相当に上がって、この段階でほぼ、こういう道に行くのは間違いないという形だったわけですね。」
「でまあ、炉心、つまり圧力容器も壊れ、非常に不安定な状態でそれでもずーっとなんとか作業を通じて冷却を維持してきた。今でもですね、不安定なんです。原子力プラントの中のシステムで冷やしてるんじゃない。外から付け足して、一部回復したところもございますけれども、基本的には装置が駄目になったので、外から人海戦術でなんとか維持してきてここにきてると。そう言う不安定な状態だということです。しかも閉じ込め機能も失ってる。になります。」
「でこれをですね、設計の方から申しますと、こういうふうに大きく見ましてですね。設計の想定の範囲と、それから制御不能な範囲というふうに考えますと、通常状態とか過渡状態とか事故って書いてますけど、要はある事故ですね、冷却材喪失事故ってのはまあ水が出ちゃうとかですね。それから電源がなくなるとか、そういう事も原子力プラントは当然考えてるんです。」
「そこでこういうふうに設計してるんですが、今回のように更に止める、冷やす、閉じ込める、という機能をですね、ある地震、津波、その他の、多分これは危機の故障、それから人為的なミスも絡むと思います。それでここに書いてあるシビアアクシデントという、いわゆる制御不能の状態になる。これが今回の事故なんですね。」
「こうなりますと水素爆発とか、水蒸気爆発とか、再臨海とか非常に危機的な問題を生みます。」
「で、図で、えーご説明申し上げますと、炉心が溶けて落ちますと、そこがそれが圧力容器、厚さ10数センチの厚い容器の中に落ちます。ここで冷却ができなければ、そのまま溶けて下に落ちます。更にここで冷却できないと、そのままコンクリートを侵食してどこまでも行く。これをまあブラックジョークですけれども、チャイナ・シンドロームって言ってるわけなんですね。」
「でこの段階で冷却をするために水を入れます。水を入れますと溶融物、非常に高温の溶融物に水が接触すると、水蒸気爆発の危険性が極めて高いんです。」
「これは火山。火山においてマグマが水と接触した沖に爆発です。こういう現象を起こします。」
「さらに冷却に、をしていきますとですね、その段階で、ま、冷却にうまくいけばいいんですけれども、ここにありますように、流れてきますと、格納容器の後半、鉄板ですね、だいたい厚さ2、30ミリなんですが、それを溶かしてしまいます。そういう壊れ方もあると。」
「でこれは事故ですから、どのプロセスに行くかは、その経過とですね、よってかわります、当然。ですが、どれを行ってもおかしくはなかった。今回はここの少なくとも、水蒸気爆発ですね、これは起こってない。」
「水素爆発は起こりました。何かといいますと、中の水素が格納容器のあるところから出まして上で爆発した。これがもし格納容器の中で爆発現象を起こしてて、そのまま格納容器が破壊してたときには、今のケタ違いの被害になります。」
「今回の格納容器は、まだ一部損傷してますけど爆発的に全部出たんじゃないんですね。爆発は建物、つまり格納容器の上、で爆発して一部出ちゃった放射能が飛んだだけなんです。そういう関係になります。」
「で原子力技術の特徴について、申し上げます。」
「ま私の、えー、理解では、非常に技術が細分化している。これはあの、全般の原子力にかかわんない、あの限らない面もあるんですけれども。特に原子力においては全体像が把握しにくい。技術者はなかなか周囲の仕事を知らない、形になってしまう。」
「そうしますとですね、設計の段階での管理、これはあの、設計をどういうふうに変更するかとか、設計したものがこれでいいのかっていう、デザインレビューとか言うんですけど、いろんな分野の人間が審査したりする。」
「そういう事をやってきてるんですけど、どうしても技術というのは、非常に危機感を持って、例えば、事故が起こるとか安全はどうだということを考えながらデザインレビューしてれば意味がありますけれども。こんな事故が起こるはずがないと思ったデザインレビューというものは形骸化します。形式的にやるだけなんです。」
「私の経験してるとこでも、当初、最初の頃はかなりデザインレビューがしっかりしてた。それから5年、10年たつに従って非常に形骸化して言った。そういうふうに思います。これは安全審査についても言えます。そういう形でどうも見ていますと、技術のわかる専門技術者が本当にいるのかと審査に。という印象を受けます。」
「それから、更にですね、事故が、まあ多発してるということです。これはですね、軽水炉、つまり今回の福島の事故に限らない、軽水炉と申しますのは、沸騰水型と加圧水型の2種類ございますけども、今日本で使われている通常の発電所の原子炉で、今回の事故だけではなくて、いろんなところで事故が多発している。細かいことは省略しますけれども、同じく高速増殖炉もんじゅも実用がしてない。どころかトラブルの連続。」
「一部、燃料棒をこう、交換するためにですね、燃料交換するために入れた装置が、ちょっと引っかかちゃった。それでおっこっちゃったんですね。ちょっと傷ついたわけです。でそれを持ち上げようと思ったら、引っかかって上がらない。普通、機械ではよくあることです、そんなものは。1週間もあればなおります。ですけどそれはナトリウムがあるから見えない。出そうと思うと、燃料出せばいいんですけれども、燃料はナトリウムの中にないと危ないんで。そうすっと、それを出すための装置が壊れてる。なにも出来ないっていう状態が、半年、1年続くんです。こんなの技術じゃないんです。設計の立場からいうと、何を考えてるのか。そんなことを、1つのものが壊れてですね、何も出来ないのは技術じゃありません。設計の立場からそういうふうに言えます。ということなんですね。」
「それからも1つはやはり安全設計と被曝労働。これは問題がある。被曝を前提とした安全設計というのは私は非人間的だと思います。5分で行ってきて入ってこうやるわけですね。その時に仮にそれがね、そういうやり方がいいとしても、難しいのはですね、コントール出来ないんですよ。確実にね、被曝をぜ、あの、ある???なんてそんなこと私は信じられません。人間ってのはどうしてもミスもありますし。そういう事を考えますとこれは、とても私は人間的な労働だと思いません。」
「それから処分ができない大量の放射性物質。これも良くトイレなきマンションと言われてます。」
「さて、現在の事故をどう見るかといいますと、炉心が冷却、炉心の冷却を続けてます。たしかに現在全体の温度はですね100何度とか100数10度オーダーまで降りてき、落ちてきています。ですけどまだ依然として、もし冷やすことをやめればそのまま進むわけですね。そういう関係になってる。」
「しかもですね、溶けた溶融物が、メルトダウンしたっていいましたね、そうしますと圧力容器の中にあんのか格納容器の中にあるかすらはっきりしない。全く中はわかってないんです。ただし水を入れたらなんか冷えてるらしい。」
「つまり技術的に見ますと、ちゃんとした、わかってコントロール出来てるわけじゃないんです。そうであろうといって推測でやってる。これは最初のメルトダウンといったのがよくわかりますよね。最初に全く、炉心一部燃料損傷って言ってたのがメルトダウンだった。これだけ違うわけですから、今の状態に対してどれだけ責任を終えるんですか。中を見れるんですが。圧力温度は正しいんですか。どれ1つ、私は疑って見ざるをえないという状態にあるんですね。もちろん今の状態が以前よりはだいぶ、少し楽になってきてんのは明らかです。ですけど事故というのは、そういうところから思わぬところから発展して大きな事故になるわけです。そうしますとこれからも安定させてやることが以下に難しいかということを、まあ言ってるわけです。」
「あと、同時にですね、1号機、2号機、3号機とも、格納容器が損傷してます。格納容器が損傷してることは、そのまま放射能が外にでてるってことです。で、外に出てます、既にたまった10万トンに近い放射性物質を帯びた水がですね、海や地下水に漏れ続けてるんです。これは今大量に滅茶苦茶に漏れてるとは申しません。もちろんそのコンクリがありますからね。ですけど容器じゃないんです。格納容器のように閉じ込め機能を持ってないんです。ですからコンクリートが割れたらそこから行きますし、すじ?のところから行く。流れてくわけです。そうすっと、現在は大なり小なり放射性物質を垂れ流している状態が続いていると。そういう認識です。」
「それはなんとか既存の陸上タンクなりメガフロートや???でもいいです。格納機能を持ったところに入れる、ほうが先決だと思います。その上で処理をする。思います。」
「で、原子力の技術について考えますと、どれも究極な選択になってる。先ほど申しましたように、冷却しようとする。冷却に失敗すると、失敗するといいますか、水を入れると水蒸気をおこす。あるいは格納容器がそうなんですが、今回、圧力が上がりすぎたんでベントすると。どういう事かって申しますと、格納容器は放射能を閉じ込めるための容器ですから、それをベントするという意味は、放射能を撒き散らすということを意味してる。つまりですね、このままほおっておくと、格納容器が爆発しちゃう。最悪だと。」
「だけど漏らすってことは逆に放射能を出すんですよ、そのまま。人に向けて放射能を出してるんですよ、これは。なんでその認識がないかってことなんだ。その時に格納容器のベントするということの意味をどれだけみんなが分かっていたかってことになる。そこは非常に重たい問題なんです。」
「特にこの問題は、説明がですね、非常に私は間違っていると思います。きちんとした説明してないと思います。また安全をどう見るかですが、まあ、状況が把握できない、ということは非常に問題だということ。」
「もう1つはですね、安全性の哲学といいますかですね、安全の考え方が不在だというように思います。確実でないことを安全とは言えませんので、多分大丈夫だとか危険な徴候がないからいいだろ、こういうグレーゾーン問題と呼んでるのですが、こういう問題が論理的に起こりうることは、いつ、かつ、起こるかわからないわけですから、そうすると、そう言う理屈の上でですね、ある形で起こりうる事故というのは論理的に起こりうるんですね。これはその上に安全技術を築くのは砂上の楼閣だと、いう風に思います。ええ、これグレーゾーン問題ともうしますけれども、これはちょっと省略させていただきます。」
「で、福島の原発事故はですね、直接的には地震と津波でした。ですけど、これに危機のトラブルだとかあるいは人為的なミスが重なってるだろうと思います。でそういうことから、最終的には事故解析やるわけですけど。基本的には自然条件の設定が間違っていたこと。で津波が例えば何メートル、間違ったとして、仮に対策をこれからするとしてもどれだけまでやればいいかってことは非常に問題です。地震も同じです。また、例えば津波や地震、一部対策をしてもですね、それで、こういうシビアアクシデントが起こらないかっていうと、そんなことはないんです。」
「落雷でも台風でも竜巻でも、ある多重に何処かをやられてしまえば、あるいはそんな外的条件なしで、危機が故障して、それに人為的なミスが重なると、シビアアクシデントになります。つまりシビアアクシデントはですね、発生確率が小さいとして無視してきたんです、これまで。これが最大の問題です。これは原子力安全委員会の責任が重大というふうに私は思ってます。」
「またシビアアクシデントは原子炉の特性であって、不可避であると。つまり地震津波はその入口であると理解しております。」
「でこれはあの規制のことで細かくは省略していただきますが、1992年に既に原子力案是認委員会で対策を取ることは言ってた。ただ、しかしそれは、法的な規制をしない、民間の自主的な規制によると、こういう話でした。」
「で、えー、図の上でちょっと概念を申し上げますと、横に時間、縦に出力と申しますか通常のものは他のエネルギーシステムの場合には横にだんだん寝てきますけれども、原子力は赤のように立ち上がってくるわけです。それを途中で安全装置を働かせて、抑えこむんです。その安全装置は何重にもなってます、たしかに。4重にも5重にも。でもそれが全部突破されると自然とですね、原子力は……だ、ダメな方向に行ってしまうんですね、制御不能な状態になる。これが特性なんですね。これが原子力の特徴だと思います。」
「それを事故防止ができるかどうかって言うことで、事故の発生防止とか事故の影響緩和とかを考えまして、どういう対策をしても、事故、ある確率ですね、確率は小さいけども、そういう事故が起きてしまうっていう場合には、それは受任できない技術だと。」
「つまり技術をですね、ある技術だったら全部使っていいわけじゃなくて、その技術はほんとに大事故を防げんのか。防げないとしたら、起きたときの影響とはどの程度か。それが受任できない技術はやめるべきだとそういう意味です。」
「従いまして我々の、我々はですね、最悪の事故の可能性を考慮する必要がある。今度原子力の事故を起こせば、日本は壊滅すると私は思います。原子力をこれ以上進めるというのであればですね、絶対にシビアアクシデントを起こさない事を証明する必要があります。工学的には、そのようなことは私は不可能だと考えています。つまり危険な原発からは、段階的に止めるなり、するなりしかない。そうしますと完璧な事故対策を模索するというよりも、新たな分野でのエネルギーシフト、が、ほうが遥かに容易であろうと考えます。」
「まあ膨大な原子力予算をですね、他の技術へ向ければ解決可能ではないか。あらゆる原子力関連の利権、そういうものを許してはいけない。そういうものからもう一度全体を見なおして、エネルギー政策全体、を見なおして、原子力から脱却してくことが、現実的だと思います。以上です。ありがとうございました。」
(文字おこし、ここまで)
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